中野幹隆さんのこと

いまから三年ほど前になるか、哲学書房のホームページを立ち上げたいという話があって、松岡さんと西田さんの三人で御茶ノ水を訪ねたときが最後になってしまった。その後、野矢茂樹ウィトゲンシュタイン論理哲学論考』を読む」の感想をメールでお送りしたとき、その返事に癌の手術をうけることが書かれていた。
季刊哲学で社員募集の告知があって、村上春樹の「ダンスダンスダンス」の感想文を送った。その前後に、編集者とは、編集とは、何でしょうか、と尋ねたとき、言語にとっての美を追求するのが作家で、それを二次元に写像変換するのが編集者である、という話をされた。私は、今後パソコン通信のようなメディアが浸透するとして、そこで展開される言語行為者間の関係において、従来の意味での編集者は存在しえなくなるのではないでしょうか、と応えた。
いま思うのは、中野さんのテーマが中世哲学、神学、生命へと変遷されたのは、流行ではない普遍の真理を追求されていたのではないかと。