all along the watchtower

この曲は、私が知っているだけでも、ジミ・ヘンドリックスU2ニール・ヤングがカバーしていて、どれも共通して、閉塞感と緊張感、切迫した感じがある。詞の時制は過去形で、昔々って感じの物語風。詞をじっくり読んでみた。
ジョーカーと泥棒の会話。ジョーカーが泥棒に愚痴るのが1番、それに応えて泥棒がなだめるのが2番。それで3番になって、はじめて見張り塔がでてくる。映画でいうと、1番と2番で、顔のアップが交互に映されて、3番になると、場面が変わって情景描写になる感じ。
さて、このジョーカーというのが、訳すのが難しい。塔、王子(王女?)、といったイメージから、タロットカードを連想する。ジョーカーはもともと愚者(フール)に由来しているので、トリックスターのニュアンスもあるのかなと。
1番でのジョーカーの語りは、混乱した状況とそこからの脱出願望。俺のワインはbusiness menに飲まれるし、俺の土地はplowmenに掘られる。ワインの価値、土地の価値を連中は分かっていない。あいつらもこいつらも勝手にやり放題で、心が安まることもなく、ああ、もうこれ以上ここにいたくない、という心情。酒蔵の主人みたいな人物設定なのかなと。
2番では、まあ、そんなに興奮しなさんな、と泥棒が応える。本気でそう思ってるわけじゃないんだろう、もう遅い時間になったことだし、と話を切り上げようとする。
2番で意味をとるのが難しいのが、

There are many here among us
who feel that life is but a joke.

直訳すると、人生なんて冗談にすぎない、と思ってる連中にも、たくさんの「ここ」がある。この「ここ」ってのは、生きるための場であり現実ってことだろうか。
これに続いて、でも、俺(泥棒)とお前(ジョーカー)は、そうした状況をこれまでずっとやり過ごしてきたのだし、これが俺とお前の運命じゃない、と展開。
韻での連なりから解釈すると、jokeはjokerに、reliefはthief(泥棒)に、重なっているので、ジョーカーをなだめ、落ち着かせようとするのが泥棒で、一方のジョーカーはまじめに混乱を憂いている、というジョーカーや泥棒の意味を反転させる構図になっている。

対になってる1番と2番から、3番では一気に視点が変わる。王子(王女?)がいて、塔からずっと見張っている一方で、女たちと裸足の召使いたちが慌ただしく(城から)出入りしている。二人のライダー(馬に乗った?)が近づいてきたのは、さて、何かのメッセンジャーなんだろうか。野良猫が吠え、風が唸る、嵐の予感めいた不気味な雰囲気。