Dylanの暗号的ボーカルスタイル

YouTubeでDylanのライブ映像をあれこれ見る。
90年代以降のDylanのボーカル、ほとんど念仏のように聞こえる。
歌い上げない、メロディラインをなぞらない。
2小節で歌われていた詞の1行が1小節に圧縮されて、暗号のように発せられる。
このようなメロディに対するスタイルというのは何なんだろう。
Dylanの曲は本人のよりもカバーの方が、原曲のメロディーの美しさがうまく引き出されていることが多い。
しかし、Dylanは、美しいメロディを美しく表現することを徹底して避けている。
メロディーの変奏とか、アドリブとか、そういうのとは違うし、ラップのスタイルとも違う。
バラードの『残虐行為展覧会』で濃縮小説という言い方があったけれども、さしずめ濃縮歌とでも形容したらいいのか。
侘び寂びの美意識に近いのかもしれない。